Eclatez
思いついたらメモ。その程度。定期的な更新なんてありえない。
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叔父と癌
 年の夏、何の前触れも無く日田市に住んでいる従兄弟夫婦と叔母が訪ねてきた。

 私の自宅近くにガンセンターがあるのだが、そこにセカンドオピニオンを頼みに来たのだという。しかし、来たはいいものの、肝心のガンセンターの場所が解らないとの事なので迎えに行く事に。しかし、ガンセンターでセカンドオピニオンを頼むには前もって予約やら申請やらが必要。しかし従兄弟夫婦は突然思い立って来たらしく、そんな手続きはしていなかった。まさに無駄足であった。
しかし、何故ガンセンターなのか?という疑問がある。誰か癌告知されたのかと聴くと、従兄弟の父―つまり叔父が癌だという。お盆にお会いした時はそんな素振りも無かったし、体調が悪いような感じは全く受けなかった。聴くと、今でも「見た目」は元気だそうだ。しかし自覚症状がほとんど無いらしい。少し前に腹を下したので医者に行って診察してもらったらしいが、腸内カメラを使おうとした時、気が付いたそうだ。カメラが中に入れられないほど腸が細くなっていたのだ。明らかに腫瘍が中から腸を圧迫しているとの事。
血液検査、組織検査等々を行った結果、既に全身に転移していて治療できる状態では無いらしい。本人には告知せずに家族にだけ告知したそうだ。余命は2~3ケ月との事。
腸にカメラを入れたり出来なかった事から、従兄弟は地元の病院で下された診断に不満で、ここまで自動車にのってセカンドオピニオンを受けに来たのだった。

 従兄弟夫婦や叔母はともかく、この叔父とは、残念ながらあまり付き合いは無い。自分の親父の妹の婿だから親戚であっても、血のつながりも無い。
従兄弟夫婦や叔母の為にできる事は全てやったし今もやっている。しかし、悲しみ等の感情は全く湧いてこない。我ながら薄情だなと思う。感情では無く、理性や親戚だという事で動いている。俺は本当に酷い人間かもしれない。

 て、叔父の方はというと、腹の調子が少し悪いだけと自分で判断し、帰宅後に釣りに出かけたそうだ。告知されたのでは無いから気楽な物である。それから今月初めまで全く変化が無くすごしていた。医者が下した余命は既に超えている。傍目から見れば全く病人には見えないそうだ。抗がん剤による治療も最初の診察時で「手遅れ」と診断されていたので全く行っていない。叔父はある意味、とても幸せであるとおもう。全身に癌が転移していても自覚症状が無く、また多くの癌患者が苦しみながらも受け続けている抗がん剤治療もしていないので、治療による苦しみも無い。
叔父の唯一の苦悩は、釣に行って坊主で自宅に帰る事だったという。タバコもパカパカ吸い、健康のためにと軽い晩酌もする。
癌である事を知っている叔父の家族の方が苦しかったに違いない。

 月の初めに、従兄弟夫婦から連絡があった。叔父が入院したという。理由は風邪を引いてそれが原因になったのか、脳にウィルスが入って膿んでいるという。いわゆる髄膜炎だ。手術で頭蓋に穴を開け、膿を吸い出さないといけない。膿が脳を圧迫して、すでに自発呼吸が困難な状態だという。
 翌日になって手術が終わったと連絡がある。ほっと安心するが、その後、麻酔が切れても意識が戻ってこないと再び連絡があった。うちの両親は最悪の場合に備えて、日田の病院へ行く。私は自宅に残った。行っても邪魔になるだけだから。

 昨年、癌告知を受けてから半年以上経っているので既に覚悟は出来ているはずだとも思う。辛いだろうが、医者以外どうする事もできない。
翌日、再び手術。髄液が過剰に分泌されて再び脳が腫れてきているらしい。これに対しての処置を行ったとの事。この手術も上手く行ったらしい。数日後、目を開き、こちらからの問いかけに対しての反応も出てきたそうだ。
最悪の状況は脱したと思える。
癌だったはずなのに、癌以外の病気で亡くなるかもしれなかったという。快復に向かっているとは言え、予断はいまだ許さないのは変わりない。

 ういえば、5年ほど前に母方の叔母も髄膜炎で亡くなった。夕方に頭痛を訴えて、すぐに倒れ、病院に担ぎ込まれ、翌朝他界した。症状を訴えてから12時間も経っていなかった。この時の病院が酷い所で、治療らしい治療は何もしてくれなかった様に思う。私も夜中に駆けつけたのだが、ベッドに寝かせられている叔母は激しく頭の痛みを訴えていた。ほとんど悲鳴だった。せめて麻酔でも打ってやってくれというと、看護婦は「痛がっていても、意識が無いので痛みは感じていません」等と訳の解らない事を真顔で言っていた。それに、看護師ばかりで処置していて不安でもあったが、それでも自分たちよりは専門家であるはずなので、それ以上は強くいえなかった。

医者が来たのは翌朝。叔母が亡くなってからである。この病院は「中央病院」となっているが田舎の病院である。建物は大きくても、医者はいない。よその病院から通いの医者が2名いるだけ。それも毎日では無い。本当に酷い状況。近所の人の話によると、この病院にかかるくらいなら、近所の薬局で薬を買って自分で治療したほうがマシという人もいるらしい。地方の医療というのはそれほどまでに酷い。

 日田市はマシな方だ。叔父の場合は、そういう意味では恵まれている。しかし、田舎の医療は酷いと思いこんでいる従兄弟夫婦が、ガンセンターへセカンドオピニオンを求めて来るのもうなずける。

 岡市の保険料はとても高い。単純に医療施設のベッド数が多いからだが―各県や市の保険料は、ベッド数の多い少ないで決められている―ベッドだけ設置しても、その数に見合う医者はいないというのが現実。田舎なら尚更だ。
 昨年、新政権になったが、こういった事は何も変わっていない。政権が変わったから、すぐに変わるものでも無いとは思うが、対処すべき順番はあるはずで、人の命が優先されないという事はないはずだ。
 どの政党でも個人でも構わない。ただ、どうにかしてほしいと切に願うばかりだ。

≪2430文字:400字詰原稿用紙7枚≫
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