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七人のおば パット・マガー 著/大村美根子 訳 読了
7人のおば

 被害者探し、探偵探し、と一作ごとに新機軸
 を出して読者を魅了した才媛パット・マガー
 の長編代表作。戦後「怖るべき娘達」のタイ
 トルで紹介され、女史の名を一躍高めた記念
 すべき作品。友人からの手紙で故郷のおばが
 殺されたことを知った主人公が夫の協力を得
 て、過去の思い出の中から犯人と被害者を捜
 そうとする。安楽椅子探偵ものの傑作である。


 日、「ソラリスの陽のもとに」を読み疲れていた時に、気休めの為に別の本を読もうと、本屋を物色して「コープス・ブライド」に出会いました。その時に、同じ本屋で見つけ買って来たのがこの作品。パット・マガー作品は以前に「探偵を探せ!」を読んでいます。犯人がいつ訪れるか分からない、探偵を探しながら罪を重ねていくという本格推理作品で、多少の取っ付き難さはあるものの、とても楽しめる作品でした。
 
僕は「探偵を探せ!」を読んでパット・マガー先生の作品を好きになったのですが、他の著書を探しても見つからずにいて、長い事忘れていました。ところが先日、偶然にも出会う事ができたのです。購入し、「ソラリスの陽のもとに」読了後スグにでも読もうと、手元においていましたが、「ソラリス」を読んだ事による精神的ダメージが強すぎて、2日間程、活字を見ると頭がクラクラしてしまう状況に陥ってしまい、読むことが出来ませんでした。その後、ようやく読み始めましたが…これが、ちょっと面食らいました。もちろん良い意味で。

 「安楽椅子探偵もの」とは、主人公である探偵は一切の調査はせずに、耳に入ってくる人づての情報や、新聞からの情報だけで推理し、事件を解決するという物。国内の巨匠の作品では鮎川哲也先生の、<三番館シリーズ>なんかがあります。といっても、推理する人間が動かないというだけで、調査する人は別にいるのですが……
「七人のおば」では主人公サリーが、友人からの手紙で「サリーの叔母が夫を毒殺し、自分も自殺した」との連絡を受けます。しかし、サリーには7人の叔母がいて誰が誰を殺したのかも解らない状況に。サリーは結婚して実家から遠く海外に離れており詳細が解りません。手紙にも「誰」が「いつ」といった情報が書かれていなかったのです。――文庫の裏表紙には「故郷の叔母が殺された」と書いてありますが、これは間違いで、「叔母が毒殺した」が正解です―― そして自分の家で夜明けまで自分の夫と「思い出話」をします。(この「思い出話」こそが、この作品の本編で、たった一晩の語り合いが、この作品の正体です。)その「思い出」から「誰が」その夫を毒殺し、自殺したのかを探るという事になります。情報は「思い出」のみ。
 この「思い出」に出てくる七人のおばの話しが面白いのです。面白いというか、凄いです。まるで昼のメロドラマ。というか、女性向けゴシップ誌の悪辣な記事の様な話です。よくもここまで創造できるものだと感心し、これを書いたパット・マガー先生に脱帽してしまいます。最終章の一つ前まで家族のドロドロとした話が続き、それまで、この作品が「推理小説」である事を忘れてしまいます。 主人公が「思い出」を語り終わり、夫に話しをした事で気持ちが落ち着き、眠りこむ最後のシーンがまるでエラリィ・クィーンの「読者への挑戦」に思えてしまいます。
「さぁ、情報は全て出揃った。後はそれらを組立てて推理し、犯人と被害者を探してくれ!」
って、言っているかのようです。でも、エラリィ・クィーン先生の場合は「犯人当て」と「トリック当て」で、パット・マガー先生の場合は「犯人」「トリック」に加えて、「被害者」まで探さなければなりません。
 了後に分かるのが、読者は作品の最初からミスリードさせられているという事。途中で著者が、ソレらしい事を登場人物に言わせていますが、僕は気が付きませんでした。完敗です。
解説を読んでびっくりしたのですが、この作品は1947年に書かれたそうです。僕は最近の作品だとばかり思い込んでいました。内容が、斬新な発想と切り口、新鮮味に溢れていながら、熟成された内容の作品だったからです。ソラリスみたいに、古い言葉遣いで書かれてもいないし(※これは訳者の技量と、訳した年代のせいでしょう。1986年に発行されていますから)思いっきり勘違いしていました。
パット・マガー先生の作品はこれが初めてでは無いのに…勉強不足でした。

 サリーの思い出には「七人のおば」をはじめ、彼女たちの夫や子供、友人たちやなんかが出てきます。本の冒頭に家計図が載っているのですが、あまり役にたちません。あまりにも登場人物が多くて、関係が複雑で、作品前半は、誰が誰だか解らなくなりそうでしたが、物語が進むにつれ、各登場人物の個性が次第に強調され、当初の混乱は解消していきます。作中に出てくる叔母の一人ドリスの家族関係なんか複雑すぎて、自分にはうまく説明する事など不可能です。なぜ、こんなに複雑な関係を解りやすく読者へ伝える文章を書けるのか不思議でしょうがありません。もちろん、複雑なのはドリスだけでなくサリーを除く全員なので、一つの作品に収まっているのが不思議です。家族ごとに、作品が一つづつ書けそうな位内容が濃いのです。
こういうのって、推理小説というよりも純文学に近いような感じじゃないかと思ってしまったほどです。とにかく、一人ひとりの描写や嗜好が緻密に、主人公サリーの視点で描かれていて、作品に深みを与えています。昼のメロドラマ的な面白さを持ちながら、決して軽薄な内容にならず、むしろ重厚ささえ感じてしまいます。なんで、いままで、この作品に出会わなかったのか、悔しさすら湧いてきます。パット・マガーの作品はなかなか出会えませんが、まだ手に入れていない作品に出会える事を望んでいます。

パット・マガー先生の作品は「被害者を探せ!」が処女作で、今回読んだ「七人のおば」が2作目です。昨年読んだ、「探偵を探せ!」が3作目という事です。正直、3作目の「探偵を探せ!」よりも「七人のおば」の方が面白いです。「探偵を探せ!」は、アイデアは斬新ですが処女作の二番煎じみたいに思えますし、いま思い出すと、内容も淡々としていたような気すらします。けっして凡作では無く優れた作品であるのは間違いの無い所なのですが、「七人のおば」を読んだ後ではどうしても、そう感じてしまいます。

≪2625文字:400字詰原稿用紙7枚≫
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テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

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