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陪審員はつらい パーネル・ホール 著/田中一江 訳 読了
 陪審員はつらい

 この世には、つらいことが多すぎ
 る。私立探偵として独立したもの
 の、相変わらず借金におびえ、妻
 には頭があがらない。そのうえ、
 陪審義務まで命じられたのだ。わ
 たしはしぶしぶ裁判所に出向いた
 が、そこで同じ陪審員候補の美人
 女優と知り合った。が、喜ぶのは
 早かった。まさか彼女が、わたし
 に殺人事件の容疑者となる運命を
 もたらすなんて……次々と待ち受
 けるつらい試練に耐え、ひかえめ
 探偵が事件解決に奔走する第六作


 「やっぱり、面白い。」それが読了後に、最初に僕の口から出た感想の一言だった。
主人公スタンリーは今回、不運にも陪審員候補になってしまう。日本でも昨年の2009年5月21日に施行された「陪審員制度」だ。この制度を巡っての問題の提起や議論は今もあちこちで続いている。僕は「陪審員制度」はアメリカが本場だと思っていた。しかも長く続いているので、アメリカの制度下での問題は日本ほど大きな物では無いだろうと思っていた。というか、アメリカでは普通の事であり問題は生じていないというイメージすら持っていた。※同じ陪審員制度といっても日本とアメリカでは異なっているし、当のアメリカでも州ごとに制度は異なっているらしい。なので、同じ様に考えるのは不適当だと、後になって気付いた。
  スタンリーは自営業で、彼一人が、ただ一人の経営者であり、たった一人の社員。唯一の収入源だった。つまり、彼が陪審員候補になって身柄を拘束されれば、途端に収入が無くなる。当然、意義申し立てをする。しかし、無残にも即刻却下されてしまう。仕方なく、陪審員候補として身体を縛りつけられていない時間―朝8時から10時までと、夕方5時以降に―親会社から仕事を回してもらう事にする。こういう生活に関る事が陪審員制度の一番の問題点である事を教えてくれる。まぁ、家計のためと言いながらも、無理をして稼ぐその姿はカッコイイ。こういう男は好きだ。ブツブツ言いながらやるべき事をやっている。
 日本で語られる「陪審員制度」は裁判に参加してからの説明が目立つけれど、このパーネル・ホールの作品では、その前の段階での「身柄拘束」の問題に付いて語っている。
「陪審員候補」に選ばれ、裁判所で身柄を拘束される。その時点の仕事は「待機」だけ。2週間の間、待つ事だけだ。その間に抽選が行われて、集まった候補者から50名が選ばれて、面接を受けて、12人の陪審員と2~4名の交代要員が選ばれる。つまり「陪審員候補」に選ばれて身柄を拘束されても、「陪審員」になれるとは限らない。「陪審員」に選ばれなければ2週間の(退屈で収入のない)拘束だけで済むが、選ばれると「裁判が終わるまで拘束される」ことになる。下手したら何年も。仕事を失う可能性だって出てくる。
 物語の方は、主人公が「陪審員候補」から運悪く「陪審員交代要員」に選ばれてから進行する。その後、同じ陪審員チームの一人が殺され、その第一発見者となってしまう。「第一発見者」は当然疑われる。スタンリーは自分の身の潔白を証明しなければならなくなってしまう。仕事と陪審員制度のせいで、ただでさえ時間が無いのに。この辺りが、この作品の楽しめる箇所の一つ。
 アメリカのサスペンス作品は小説でも、映画でも、裁判ネタが多い。アメリカ人は裁判ネタが好きなのだろうなと思ってしまう。※以前、何かのニュース番組で裁判に興味があると言って、ニンテンドーDSの「逆転裁判」に夢中になっている30代後半のアメリカ人達が紹介されていたのを思い出した。個人的には、裁判を扱った映画で好きな作品は「タッカー」と「シューター」、それと「評決の時」。どれも最後の最後での逆転劇が面白い。

今回読んだ「陪審員はつらい」では、たしかに裁判に不可欠な陪審員をあつかっているが、積極的に裁判に関るストーリーでは無い(かのように見える)。主人公スタンリーも、裁判に参加しても「退屈だ」「つまらない」と、不平や不満を連発している。仕事の事、パーキングメーターの事等、裁判とは関係の無い事で頭が一杯だから仕方が無い。さらに、殺人事件が起こって、容疑を晴らさなければならないのに、陪審員から解放されないという最悪の状況に。そこを助けてくれるのは、マコーリフ警部。スタンリーと事件を通じて知り合いになった警官。助けてくれるといっても、ほとんど手を貸してくれないけれど(笑)
 今回の見所はやっぱり、最後の展開だろうと思う。あれほど嫌だった裁判で……しかも、事件を解決したのはスタンリー。それも警察よりも早く!!ラストの章は、読んでいて気持ちが良かった。面白いだけでなく、本格推理物の作品の様な鮮やかな展開。物語序盤から出ていた、意外な犯人を納得いく推理で指摘する。もちろん証拠もある。まるで主人公スタンリーが、エルキュール。ポワロにでもなったかの様だった。
「陪審員はつらい」は全414ページで、長編作品。でも、短編の様にすぐに読めてしまう作品に仕上がっている。実際、先日読んだ「このペン貸します」よりも時間はかからなかった。しかし、面白くてテンポ良く読めた最高の作品でもあるけれど、不満が残らなかったと言ったら嘘になる。
 殺人事件を担当している「サーマン刑事部長」の事。彼の出番は少ない。スタンリーを手助けするマコーリフが彼の「良く無い噂」をスタンリーに吹き込む。犯人だと思ったら、証拠をでっち上げてでも犯人に仕立て上げると。そして、その容疑者はスタンリーだと。スタンリーは気が気ではなくなるが、サーマンはラストまで出てこない。スタンリーに詰め寄るサーマン刑事部長の姿を期待していただけに、それが拍子抜けだった。それと、最初に陪審員候補になって仲良くなる爺様との確執も、もう少し発展させて欲しかったなと思う。本筋には直接関係無い事だし、ソレでなくても長編だから仕方無いかもしれない。でも残念。
そんな、個人的なマイナス点をつけても、この作品が面白い事には何ら変わりない。
最後の一行、スタンリーのセリフがまた良い。被害者の「何」が原因で犯人が犯行に及んだのかが一言で語られる。パーネル・ホールのこういう所が好きなんだよね!
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テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

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